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キベラスラムの助産婦フリーダさん

「ハワユー!ハワユー!」と鼻を垂らしながらまだ保育児のような子供達が声を掛けてくる。
手を振って応えると喜ぶ。
母親達はそばで洗濯やらお喋りやら、相変わらずにぎやかなキベラである。マゴソスクールを終えてから助産婦さんであるフリーダさんを訪問。

可愛い水色の建物で天井の低い診療所である。
私の頭はドーナツを2~3段積んだような髪形なので頭を曲げないとドアを通り抜けれない。
ちょうど分娩を終えた所に私たちはやってきた。
入院の施設としてはなかなか立派である。
年金をつぎ込んで診療所を改築したらしい。
その年金も底をついてパートに支払うお金が無いといっていた。
ボランティアで近所の人がお手伝いに来てくれるが、ほとんど一人で診察から分娩まで行っている。
診察室に分娩台をおいてそこで行うこともある。
受付も自分がやらなければならないからだという。
つまり患者が来たとき奥の手術室にいては人が来院した時気が付かないし、すぐに応対できないからだという。
64歳という年齢なのにシワはなく、ツルツルのたるみの無い肌である。髪形もケニヤでは命というほど、やはり美しくしている。
お世辞ではなく心からにじみ出る微笑で私たちを迎えてくれたのである。2時間前に分娩を終えた患者が新生児と休んでいたので覗いてみた。
彼女には微笑がない。悲しそうな顔なのだ。
18歳で1児の母である。
若い時の夢もあるだろうに、どんな夢を彼女は描いていたのだろう。
幸せな夢であるに違いないのに。今まだ名前も無い小さな命をじっと見つめているだけである。
母親はHIVに感染しており、新生児も感染しているだろうといっていた。
あと2時間もすればこの母親はベッドから起き上がり、働きにいくのである。生きていくためである。
そうしなければ明日の生活はない。何と悲しい人生だろう。
その上HIVと他人に知られたら働けないかもしれないのである。
この母親は子供を生んで初めて自分がHIVに感染している事を知った、ほとんどの母親がそうである。
勿論、父親もHIVであるが、父親が大抵何処かで感染してくるのだろう。父親は母親を責める、たとえ父親のせいでも。
罪を擦り付けるのである。
そんなわけでほとんどの母親は、夫に内緒にしてくれと頼むのである。
そうしなければ、暴力や暴言で家を追い出されるかもしれない。
生活する場所を失う事に大変怯えている。
住む家が無ければ、子供を捨てなければならない。
悪循環である。
ストリートチュ―ドレンが増えるのはこんな事情を抱えているのも1つの理由であると思う。
金銭的に余裕の無い患者から治療代を請求しない、払える人はほとんど居ないのが現状で、切り詰めてもお金は残らないし収入源はないため一人で全てをこなさなければいけない。
社会奉仕をしているフリーダさんのような人材は大変少ない。
フリーダさんが今求めている物は人手である。
お金でもない、フリーダさんの助けとなる善意ある強い人間である。興味本位で自分にチャレンジなど安易に考えている人間ではない。
長くそしてこの厳しい現状に立ち向かえる根性のある人間である。
それで無ければ足手纏いであることをお伝えしたい。
キベラを訪問した人々には責務があると思う。
自分の目で見た事を伝える事も一つである。
行動を起こすことも一つである。
思い出のページを飾るだけでなく、重いお尻を椅子から立ち上げて欲しい。
しかし心ばかりが焦り椅子から立ち上がっただけの自分もここにいるのはジレンマである。
祈るだけなのか?そんな事でアフリカが変わるのか?そんなはずが無い。何も変わらないまま、アフリカはどうなるのだろうか? 私にできることさえわからない。
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