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マサイ族のダイアンは私の夫?

私はスタディーツアが終わると1週間の単独行動に入った。
真紀さんたちと別れを告げまた会う事を約束して、私はマサイマラに、今度はサファリーカーではなくケニヤ航空で飛んだ。
臼井さんはキリマンジャロ登頂に挑んだ。
大変辛い登山である事は真紀さんから聞いていた。
芯の強い臼井さんならできるだろうと確信していた。
後で聞くと高山病にかかり途中で断念しそうになったのを仲間達に励まされながら、はって登ったという事だ。
流石キベラハワイアンガールズの私のおっしょさん。

一方、私は友人が勧めてくれたマラロイヤルに宿泊する事にした。
そばにはマラリバーが流れヒッポープールがある。
無数のカバが鼻だけを出して潜っている。
皮膚の乾燥を避けるためだ。時おり大きな鼻の穴を広げてブルブルバオーと呼吸をする。
その光景はまるで川を渡りきった鮭のようである。
鈍い動きとザブ~ンと水に沈む音はすごい。さて私が案内されたお部屋はテントと丸太の木を合わせた一軒家。テラスの下はマラリバーが続いている。相変わらずカバが一日中鼻と目だけを出して大きな体を泥色の川に隠している。日が沈む頃になると、すごいうなり声としぶきを上げて、仲間割れか、兄弟喧嘩やらをやっている。しかし和な響きに聞こえるのは不思議だ、子守唄のようにカバの喧嘩は私を癒し心地の良い眠りにいつも入る事が出来た。朝食のため部屋から出ると必ずライフル銃を持ったガードマンがいつの間にかそばにぴったりと付いて誘導してくれる。無口で話しかけても返事はスマイルだけ、サバンナの中にあるこのホテルは野生の動物に狙われる可能性があるのだ、高電圧が流れるフェンスも何も無い敷地、だからサバンナヒヒも私たちから遠く離れた所に姿を出す。
時々ライオンの声も夕食時に聞こえる。ライフルを持ったガードマンが46時中我々をガードしてくれているので安心である。敷地内何処を歩くにもいつの間にか現れ、そばにぴったりと付いて来る。あまり無口なので、からかっていると親しみを感じてくるのか、同じ人がガードしてくれるようになる。ライフルも持ってみるかと言われ、持ってみるとすごく重い、ライオンがかかってきたら構える事が出来るのかなと思うほど倒れそうなくらい重い。
こんな経験は二度と無いだろう、写真でも撮っておけばよかったなと後悔した。このホテルはまだ開業してから一年もたっていない、新しいホテルであるが、掃除が行き届いていないのが大いなる欠点である。マサイ族の18歳ぐらいの少年がルームサービスを研修中のようであるが、それを教えるマネージャーもマサイ族である。当然かどうか、バスローブの臭いを嗅ぐと前のゲストの臭いがする。気持ち悪い。床は綿埃が隅々にある。私が使ったコップにはまだ口紅が付いている、それを水で流しておいてあるだけ。支配人に説教したので当然何かが変わるだろうと思ったが期待してはいけない国と前にも述べたようにその通りであった。
シーツは一度も取り替えてもらえなかった。
しかしサファリーゲームだけは今までのどのゲームより素晴らしかった。ほとんど不可能と思われたヌーの川渡りやライオンの餌狩り。サイも目の前で鑑賞できた、ものすごく大きい、木々の間から現れそれも手の届きそうな所まで近づく事も出来た。
まるでストーンエイジにでも迷い込んだような感じだ。やはりここでもライフルを持ったガードが付いている。サイは性格が凶暴、刺激を与えるような行動は禁物で静かにゆっくりと私たちもサイと一緒に動いた。ゲームは数時間続く、何に遭遇するか分からないのが面白い。サバンナの風は気持ちが良い、サファリーカーの窓を開けると沢山の風が通り抜ける。又酷い時は乾燥した土が舞い上がり目を傷める。サバンナでの生活は厳しい、この土埃でマサイ族は早いうちに目を痛め、黒目は白く濁ってしまう。日差しが強いので白内障で水晶体は更に混濁してしまう。
それでもQOLを求めて質の良い医療を受けたくとも出来ず失明してしまうマサイ族もいるに違いない。或いはただ年老いて目が不自由になったとしか認識していないのかもしれない。
健康診断たるものは無い。

近くの町に足を運ぶと、目の白いマサイ族の老人が路上に座ってビーズのネックレスを不器用に手を動かして作っていた。きっとよく見えないのだろう。飲みかけのファンタを差し出したら喜んで飲んでくれた。捨てようと思ったファンタだったが、「捨てないで老人にあげなさい」と一緒にいたカレンジン族が言った。
42の種族が混在する国、キクユ族は人口規模が最大で446万人ケニヤに存在する。カレンジン族は第4番目で246万人だ。
カレンジン族は実はホテルで仕事をしている私の友人の友人だ、以前宿泊したロッジの真面目で評判のウェイターだ。またウェイターとして働いていたマサイ族も私の友人として街を一緒に散策した。それに運転手も一緒だ。町は賑やかで、背広を着たビジネスマンも居た、銀行もあった。商店もあった。活気があり私も生気が戻ったように嬉しくなった。
売り子の女性にカメラを向けると、顔を隠しながら「恥ずかしいから、だめだよ」と手をノーと振る。
八百屋のオバちゃんが「ユーアースマート!」といってくる。
私、頭がいいの?どうして分かったのだろう?
「違う違う、細くてスタイルがいいってことだよ」とマサイ族のダイアンが教えてくれた。それって日本語の解釈と同じじゃない! ケニアの魅力的な女性は腿が太くなければだめ!だからスマートはお褒めの言葉ではないのかもしれない。ちょっとがっかり。
でも足は太くなりたくは無い、やはりスマートがいい。
それ以外にも発見したのがセロテープである。
「スティッキーテープある?」とたずねたら。
「ああ、セロテープのことね。」 セロテープって確か日本では商品名、いったい日本語の表現と重なるのはどういうことなのだろう未だに解明できていない、誰か知っている方が居れば教えて欲しい。

新しい発見が一杯の町、更に進んで行くとブティックがあった勿論薄暗い埃だらけの店である。天井からびっしり洋服の上に洋服をずらして重ねたように飾ってある。こんな服ケニア人でさえ着ない。派手でダサイ、ケニヤファッションなの?ピンクや黄色、緑といったように原色が多い。
カレンジン族が靴屋にいくというので一緒に行ってみた。
私の好きな靴は無い、履き心地のいいサンダル、ズックなどデザインは関係ないようだ。カレンジン族がサンダルを見ていた。500シーリングだ、1000円か、安いなと思っているとレジに向って包んでもらっている、「お金払っておいて」といわれて払っておいた。
そろそろ現金がなくなってきたのでATMまで案内してもらってキャシュアウトすることにした、ここで現金にしないとホテルで支払うお金がなくなってしまう。カレンジン族が勝手に計算して「15000シーリングぐらいおろせば間に合うんじゃない。」一度に全額は下ろせないので分けて下ろした。
カレンジン族がATMから出てくるお金を自分のポケットに入れた。
小刻みに分けておろすたびにポケットにいれる。
安全のために保管してくれてるのかと思った。ATMから離れてもお金をポケットから出そうとしない。「ねえ、お金返して、貴方のポケットに入っているでしょう、預かってくれて有難う。」苦笑いしながらポケットから出した。「まだ持ってるでしょ、こっちのポケットに入ってるのも返してね」と堂々と道のど真ん中で大きな声で言った。苦笑いして渋々私の手に渡した。それでお金の話は止めた。そうしているうちにダイアンがあわてて私のところにやってきた、「お金が足りないから5000シーリング貸して、リョウコ!!」とあせっているようだ。
「分かった、分かった、ハイこれ、5000シーリング」と彼に手渡した、ダイアンは喜んで又買い物に戻った。一度サバンナのロッジに戻るとこの町まで来るのは大変である。車もないし勿論免許も無い、こんなチャンスをダイアンは逃さなかった。
私が運転手を雇って町まで来たのだから。家族のために果物や野菜を買ってその後は自分の村に私を招待することになっている。私も楽しみにしていた。なかなか人情身のある人間的なマサイ族であるが戦士魂は欠けている。お土産か!なかなか親孝行だなと思って感心していた。
カレンジン族の友人は携帯電話の店に入っていった。
私を呼ぶので入ってみると今度は「6000シーリング払っておいてくれ。」ウ~~~ン!!何で?お金が無かったら買うの止めたら?と心でささやいた。でも知っていた、ここに来るには大変なことである事、彼らには車が無いし行動範囲が限られている事。
「分かったじゃ6000シーリング。」もしかしたら返してもらえないかもしれない、その覚悟も私にはあったのかもしれない。
道案内のお礼と考えればその時はいいと思っていた。その後又カレンジン族は要求した。
「子供のスクールヒー10000シーリングを出してくれ」
「何で私が出さなきゃいけないの、貴方の責務でしょ!!」
「僕は君に言ったでしょ、そして納得してくれたでしょ!!」
「えっ~~?何時?私一言もいってませんから」
「ATMでおろす時僕が計算したでしょ、それで納得して現金を下ろしたでしょ」
「何で、それが納得なのよ、私はそんなの聞いてないし、納得もしてない。第一私には貴方の子供の学費まで払う必要ないし。そんな要求第一考えられない事。貴方には失望したわね!言っておくけど答えはノーだから」
その後私の説教で自分が間違っていた事に気がつき謝罪をした。
驚く事だらけで、道理に合わない事がまかり通るのかとここで実感した。私は歩くATMなのかもしれない。ギュと財布を服の中に隠した。疑いたくは無いが彼らの甘えるという習慣は真紀さんから聞いていた。
彼は1ヶ月12000シーリングの給料で5人家族を養う。
マサイ族のダイアンは6000シーリングだった。
収入は驚くほど低い。ためしにカレンジン族に聞いてみた、「もっと自分を磨いて給料のいい仕事に就いたほうが良いんじゃない?どんな仕事が高収入もらえるのかな?」
そしたら私のバッグについていたケニヤ航空のタッグを指差した。
「じゃここに挑戦してみたら?貴方は英語も出来るし、接客マナーもよく理解してるし。」
でも彼は首を横に振った「無理だよ、いい仕事は全部キクユ族しか採用しないんだ。今の大統領はキクユ族だからそれは不可能さ。」そうすると彼はずっと12000シーリングのウェイターなのだ。
ダイアンと違って非常に無口な彼はもっと無口になった。そしてもっと悲しそうな顔をした。足を見てみるとさっき買ったサンダルを履いていた。よく見ると、デザインが左右違ってる。さっきからこれを気にして見ていたようだ。
ポツリと少し笑いながら、「色は同じだけどデザインが違う。」
さすがアフリカ!私はこの状況が可笑しくて顎が外れるほど笑った。 
彼も「うふ、うふ」とサンダルをみて苦笑していた。
すぐに言わないのが彼。
しばし考え込んでポツリと場違いで言ってしまう。
信じられないアフリカのサンダルそしてそれを確認せずに袋につめる売り子さん。本当は気がついていたのかも知れない。あり得ない事がどうしてアフリカではあり得るのだろう?
彼の足に2つの違うサンダルがピタリと違和感無くはまっている。
ダイアンが戻ってきて雰囲気が一変して和らいだ、相変わらず明るい顔で、果物、野菜両手にいっぱいのお土産を抱えて更に目は輝いてた。
それに私にまでお土産を買ってきてくれた、「リョウコにプレゼントだよ」あけてみると真紀さんが結婚式に着ていたような、白いノースリーブのきらきらの飾りが付いている上着だった。
ダイアンも私を我が家に招待するのが嬉しかったのと家族に会えるのが2重にも3重にも喜びを膨らませたに違いない。
ダイアンの家はタンザニアとケニアの国境に位置していた。
早くこの町を出発しないと帰りが心配だ。全員がそろった、中には私の知らないダイアンの友人が乗っている。
雰囲気から察するにダイアンと近所同士らしい。
このチャンスを彼も逃さなかったのだ。かなり遠い故郷で2~3分の再会を楽しみにそれぞれがお土産を抱えて出発した。
やはり遠かった、想像以上に遠く小さな町で何度か休憩した。
皆そんな時は薄暗いお店でファンタを買って飲む、私もご馳走になった。多分20円ぐらいだったかなと記憶する。
冷えてないファンタはシャキッとしないが美味しかった。
又車は更に距離を走る。途中から道がなくなった、木々が生い茂り浅く細い川が流れ其処を走った。
車の窓を閉めないと枝が容赦なく車中に入るほどの細い道。
「ダイアン、本当にこの道でいいの?」心配になってきたので聞いてみた。「大丈夫、後10分だから」。
太陽はまだ頭の上にあった。
「明るいうちに帰らないと」運転手も言っていた。
道なき道は何処にでもあった。川を渡り、滑り台のような泥道を滑り落ち、木々の間を潜り抜け、洞窟のような狭い場所を車は走り続けた。それでももう10分は当に過ぎた。
「ダイアンもう道は無いよ~! 地獄には行きたくないよ、ダイアン」 急に視界が広がった、家が1件見えてきた、今までのマサイ族の集落とは違う、車は速度を落とし停止した。ダイアンの実家だ。
ママが住んでいるらしい。はっきりと知らされてないので雰囲気で悟るしかない。ここの習慣らしいが紹介は無い。だから自分から自己紹介を手短にやった。子供達は喜んで私に頭をなでてもらうためくりくり頭を一人ずつ出してきた。尊敬している証らしい。
とても可愛いし人懐っこいが赤ん坊だけは私を見てのけぞって泣いた。
小さな子供が一生懸命おんぶしているのだ。背中では泣いている赤ん坊、微笑んでおんぶしている子供、皆可愛かった。
ダイアンのママは皺くちゃでおばあちゃんだった。そして細かった。
ダイアンも西洋の文化におかされている割にはプレタポルテのモデルより細い。再会の喜びは数分だった、ダイアンの同乗した友人もこの辺らしい。バナナなどお土産を門の前で母親にわたし、バナナを一本ずつちぎって兄弟に上げていた。それだけで家族と彼は分かれた。
再会はあっという間で会話など交わす暇が無いくらいだ。でもバナナから愛情が伝わった。
次にダイアンの家族が待っている家に向った。
家はぽつんと集落から離れた所に一軒だけあった。テレビのアンテナが見えた。
「リョウコ、テレビが家には有るんだ」といってアンテナを指した。
車から降りると珍しがって、子供も大人も集まってきた。
ダイアンの子供はすぐ分かった。なぜならダイアンはマサイ族には珍しくすごい出歯だったから、優勢遺伝で子供も受け継いでいるはずと思っていた。案の定そうだった。
でもすごく愛嬌があってきれいな目で私に近寄ってきた。
頭をなでると喜んで次から次と子供達が頭を近づけた。どの子も可愛い、以前にダイアンと撮った写真を2度目の再会でダイアンに渡しておいた。それを見たダイアンのワイフであるフローレンスはとても喜びビーズで作った分厚いネックレスを私の首にかけてくれた。
「写真有難う、リョウコは私の友達よ、その証にこのネックレスをプレゼントするわ」
テレビの上に飾ってあったダチョウの卵もプレゼントされた。鶏の卵の10倍以上は有るだろう。そこにもビーズが施されてあった。お部屋を飾っていた貴重なダチョウの卵、でもどうやって日本まで持って帰ろう?と感謝より先に素朴に頭をよぎった。ソファーに座るよう勧められ子供達と一緒に座った。
2人がけのソファーに6人座ったので、一人ひざの上に抱っこしたら恥ずかしそうにニコニコしながらうなだれた。
そして腕を肩に回してくれた。他の子供達は羨ましがっていたのか私の化粧が不思議だったのか顔をなでたり、髪を触ったり、臭いを嗅いだり、スカートをめくったりで大騒ぎだった。
女性達の視線も同時に感じながら、化粧をしてあげるとジェスチャーで話した。持っていた口紅を塗ってあげたら、皆唇を突き出してきたので、全員に塗ってあげた。そうだ眉毛もかいてあげるとジェスチャーで提案したら喜んだ。
バッグの中を見たら眉用のペンシルがなかったのでどうしようかと考え。あっそうだ、リップライナーがあったっけ。それで描いてあげよう。
良かった彼女達を落胆させずに済む。ちょっと赤茶色のライナーだったけど、描くだけ描いてみようと思いっきり眉の上に重ねたが彼女達のしっかりした眉とライナーの赤茶が中和されてしまいおかめのような間抜け顔になってしまった。
初め喜んでいた彼女達だったけど急に暗い顔になったのは万国共通だった。アナスイの口紅は代表でフローレンスに上げてきた、これで少し点数を取り戻した気持ちになった。
30分ぐらいの滞在だったけど、彼女達にとって始めての日本人だったに違いない。
お別れは抱き合って、もう会うことのない事を感じとりながら別れた。
車窓から見た皆の顔が悲しいのか嬉しいのか、きっと私の描いた眉の性だろう。
悲しそうだった。子供達だけは相変わらず、はしゃいでいた。

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