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トイレもない、水もない、電気もない!さあ どうしよう 


真紀さんのダーリン(夫)はマサイ戦士、ジャクソンに会えるなら、テントを張って寝る事も平気、トイレもない、電気もない、水もないジャクソンの村に行ける。
なんかちょっと変、どれも生活をしていくのに必要不可欠なのに、不便な生活を経験した事もない私は幸せを感じているのだから。喜びすら感じている。
道なき道を5時間、ナイロビからマサイマラまでおよそ270キロ、砂埃をあびながら車はマサイマラへ向う。
窓から入る土埃で顔はザラザラ、服はしっかりとそれを吸いこんで叩くと埃がポンポン服から飛び出す。
窓を閉めれば、エアコンのない車は暑くなり、窓を開ければ、舞い上がった埃が全ての隙間から入り込んでくる。
その上、道はアスファルトは削り取られ、剥き出しの赤土が深く陥没し、それでも車のハンドルを切るドライバーのダニエルの手は慣れたものだった。
おそらくアスファルトになってから長い歳月そのまま補修は一度もされていないのではと思った。
そういえばマダガスカルを旅したときもそうだった。
フランス領だったマダガスカルは100年前にフランス軍が道を整備して以来補修されずにそのまま放置されている。
だから道路事情は同じで陥没は激しい。
日本なら季節毎に凹んだところは平らに補修をする。
そんな事はここではありえないようだ、政府は国民のためになど何も考えていないのだから。全て賄賂で世の中は旨くいく。
まじめに働いている人間は出世しない国なのだ。
アフリカ人で出世するのは商売をしてる者、ここのインド人、中国人はその点裕福な生活をしている者が多い、つまりアフリカ人、ケニヤ人といったほうが良いかもしれない。
新しい事に興味が無く、日常の生活を改善しようと考えない。
チャレンジ精神がまず無い。怠け者だ。
私もそうだからあまりいえないが、見ているとイライラしてくるほどである。こんな事を思うのは先進国の人間だけだろうか?
でもこれだけは感心する、それは限りない貧しさの中でも幸福なのである。
日本人のように悩まない、疑問に思わない、そのまま自分の宿命を受け入れ生きる彼らに私のチョン髷は折れる。
何時の間にか車窓から見る風景はサバンナの大地に変わっていく、マサイマラ国立保護区である。ジャクソンの村はこの保護区の中に位置しここから更に約2時間のドライブが待っている。
広大な保護区だ。そこにはさまざまな野生王国の動物が存在する。
サバンナの入り口でライフルを持ったマサイ族が護衛で同伴するのがここの規則、丸く太ったマサイ族がどっしりと後部座席に座った。
マサイ族って爪楊枝みたいに手足が細く、なが~いはず。どうしたのこのマサイ族?鋭い目でライオンさえも逃げていくと聞いていたのに、目はたれ~として力がない。
真紀さん曰く、西洋の文化におかされたマサイは見る影もなく容貌が変わり果て、お腹もタルのように太くなってしまうのだそうだ。
こんなずんぐりむっくりサンに私達を野生の動物から守れるのか疑わしい。それでも居ないよりは安心かな? 
シマウマが最初に現れた。相変わらずおしゃれだな。
白黒ストライプがお似合いだ。
まだはっきりと黒に変色してない茶色のストライプは子供のシマウマと真紀さんに教えてもらった。
なるほど、考えた事も無い小さな発見にときめいた。
知識人には私はとてつもなく弱い、簡単に尊敬し無知な自分を責める癖がある。
トゲアカシヤの樹木間を潜り抜けようやく車はジャクソンの村に着いた、トゲアカシヤの枝で囲われた小さな集落は特徴的である。
野生の動物から村を守るためらしい。ジャクソンが凛々しく立っていた。
なかなかハンサムで白い歯は一層彼を引き立たせた。
7頭のライオンと1頭の象を戦士時代に射止めた戦士の中の戦士だ。
そして立派に戦士を卒業した今、ジャクソンは長老の準備期間を過ごす。
今まで教え込まれたマサイの魂とマサイ族としての生き方をこの期間に彼なりに形成しているのではと感じた。
戦士時代の鋭い目は長老への歩みと共に人間の厚みを感じた柔らかい眼差しだった。
赤い布にタイヤのゴムのサンダル、それに杖と野球帽は絶対に手放さないらしい。
腰には海賊が持つような幅の広いマサイ族のナタが下がっている。
サバンナで生活するには重要な道具で、これで牛も解体するし、枝も手際よく切って道なき道を進んでいけるのである。
私たちが村に入るのはママ達の儀式が終わってからだから、明日になる。

今日は敷地の中だがママたちの家の裏側にある敷地、つまり庭の中にキャンプをする感じかな?トゲアカシアのアーチ型の門をくぐるとママ達の円を描いたように並ぶ牛糞の家がある。
このアーチをくぐれるのは明日だ、待ち遠しい。
テントはジャクソンが張ってくれていた、初めてテントを見た。
こんなに小さいしかも臼井さんと2人ではいるテントらしい。
水は雨水をためたタンクに入っている。それで顔を洗い、手も洗える。天の恵みがここにもあった。
雨が例年より多く、敷地ににはのみが大発生している。
真紀さんは虫除けスプレーで足首からふくらはぎまで何度もスプレーをかけていた。
私たちもスプレーでしか守れないのでジャンジャン虫除けスプレーをするように本気な顔で言われた。
真紀さんは既にぼろぼろと掻き始めた。
「あっ!食われた。ここもあそこも痒い、伊藤さん達大丈夫?」のみが草の間からジュンプしている。
あっちもこっちも蚤の集団に私たちは拉致された。
ジャクソンやママ達は蚤なんて家族みたいな物でいて当たり前、いなけりゃいないでお構いなし。
生活の邪魔にはなってないようだ。第一不思議な事に食われないのだ。
絶対に!気の毒に真紀さんだけが大騒ぎしていた。
私も臼井さんも蚤の攻撃には会わなかったのだ。これも不思議だ。
私たちってマサイ族?シャベルがトゲアカシヤで出来た塀に立て掛けてある。それは何とトイレ用である、穴を掘って其処にフンバル、そして終わったら上から土を覆いかぶせるのである。
ドラエモンの何処でもトイレみたいだ。
使った紙は真紀さんが用意してくれた何気ない紙袋に入れて、溜まったらキャンプファイヤーの火の中に投げ捨てる。
私はすぐに慣れたが、初めて大空の下でパンツを下げた時はお尻まで赤面したような気がした。
ある日ジャクソンの愛犬とトイレをしている時かち合った事があった。その時はお互い見つめあったまま何もいわずに私はしゃがんでいた。
後でジャクソンの愛犬とすれ違ったが、彼は正面から目を合わせることができなかったようだ。私の気持ちも、変な感覚が残った。
これって何だろう。

今日は青空シャワーが浴びれる。
ジャクソンがトゲアカシヤの枝で作った小さなシャワー室、地面にスノコが敷いてあって、手製らしいテーブルの上に、洗面器の2回りの大きいアルミのタライがあった。
お湯は川から汲んできた水をキャンプファイヤーの上で沸かした物が直接シャワー室まで運ばれた。
手際良く浴びないとお湯はドンドン冷めてしまう。臼井さんはのんびり屋なので、私が先に失礼する。
午後3時のシャワーは気持ちがいい。
夜はかなりの低温になるので、シャワーは無理。
この時間が一番ポカポカで絶好らしい。
化粧を落とした顔をマサイ族の皆に見られるのは怖い、深く帽子を被って顔をすっぽり隠す特製帽子を作ってきたのでそれを被った。
テントからシャワー室まではみんなの前を通らなければならない、数メートルなのだ。
皆がキャンプファイヤーを囲んで話に花を咲かせているうちに足を忍ばせて無事枝で囲った青空シャワーにたどり着いた。
腰に巻いた布をカーテン代わりにする、真紀さんのアイディアである。
青空の下で一糸纏わぬ赤子のようになったのは初めて、なかなか爽快だ。
藤原紀香になった気分だ。
お湯を触ったら暖かく嬉しかった、ママ達有難うと感謝して顔を洗った。
少し茶色のお湯と底に沈んだ砂、ママ達が頭の上にバケツを乗せて運んでくれたんだ。
囲いの隙間から、みんなが見える。
ゴシゴシゴシ~と手を伸ばして洗った。
手が青空にのび、暖かい日差しが体に届いた。
気持ちいい~!!その日はママ達の村に入村許可がおりる日でもある。
ママ達が一列に並んで、ビーズでおしゃれをして歓迎の大合唱が始まる。
臼井さんと私はアーチの門をくぐって、牛糞が転々と点在しているママ達の敷地に踏み入れると、一緒に手をつないで歌った。分からないけど「ハレルヤ~」と歌った。神様に感謝しているのだろうか、私たちの出会いを。儀式は簡単だったけど心の琴線にふれた。 牛の乳搾りやビーズのブレスレット、ネックレス、キーホルダー作りをママ達と一緒に緑の草の上に座って作った。
言葉は分からないがとにかく皆で笑った。
楽しかった、幸せだった、こうしてマサイ族のママ達とわずかな時間を過ごせたなんて。心が安らいだのを感じた。
とても簡素化していて、ポレポレ(ゆっくりの意=スワヒリ語)とゆっくりだ、彼女達はいつも幸せそうだったし、いつも私たちを受け入れてくれた、文化も習慣もこんなに違うのにちっとも気にならなかったのは私たち人間には動物的な同じ感覚が備わっているのかもしれない。
つまり人間の原点がここにある感じがした。
だから近代的な文明が備わっていなくとも順応するのかもしれない。
純粋で偽りのないママ達はマサイの社会を象徴している、欲がない、嫉妬も無い、人種差別も無いからどんな人種も受け入れる。
もしかしたら、これが最終的に我々が求める行き着くべき理想の社会なのかもしれない。
私の心のバリアはママ達の温かいおもてなしですっかりはずされた。
日本では重いバリアをいつも背負っているから、ストレスは100%に達する。しかしここではすっかり身軽になり、こんなに打ち解けて和やかに過ごす事は長い間無かったのをふと懐かしい笑いの中で感じた。
その日自分達の作品を並べてママ達はマーケットを我々2人のためにオープンした。
赤い布の上に色とりどりのビーズの作品が並べられた。
ママ達も勿論ビーズで飾っていた。
美しさの象徴である沢山のビーズの装飾品は彼らにはとっても映える、耳はピアスという生易しい形のものではない、耳たぶの肉を大きく繰りぬいて皮がわずかに面影を残して輪のように開いてぶら下がっている。
お手製のビーズを飾るととてもチャーミングである。
私も真似をしてビーズをつけてみるが、私の耳にはむりである、それでもちょっとだけでもぶら下げようとしたが、その姿がなさけなかったのか、ママ達全員が草の上で笑いころがっている。
そんなに滑稽だったのかな?頭から被るネックレスは頭の途中で抜けなくなった。
それを見て又転がって笑った。
日本人の体系ってどうなってるの?ママ達の頭は小さくてカッコが良い。
私は泣き笑い。
夢のようなひとコマひとコマが過ぎていった。
その晩も夜空の星は格別だった、天の川、スバル、北斗七星をみんなで首が折れるほど見てた。
ジャクソンも犬も真紀さんも臼井サンも星屑の中に埋もれたようだった。明後日はここを去る。
何時これるかな?テントに入ると臼井さんも私もすぐに眠りに入った。
夜中に時おり焚き火の火が大きくなりジャクソンの影がテントにぼんやり写った。
テントの中は暖かい炎で少し明るくなり又安心して寝入った。

ジャクソンと真紀さんの声がかすかに聞こえた。
手を握る事もない、抱擁する習慣も無い二人だがお互いの人格を尊重し合っている日本人の真紀さんとマサイ族のジャクソン。
少しづつ国境という線が無くなり本当の平和が世界に訪れるのを祈った。
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