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スゴイツンザの長縄  鈴木ちゃぼ



ココナツ・バーム、バオバブ、アカシア等々アフリカ独特の樹木に囲まれたツンザ村、村の真ん中にひろ~い原っぱがある。



日本から持ってきた長縄を取り出しながら、原っぱで遊んでいた5~6人の子どもたちに手招き。何が始まるのか興味津々でキラキラした目をクリクリさせながら寄ってくる。木々の陰から数人の子どもたちがチラチラ偵察しながらコソコソ友達と話している“あのおいちゃん何するんだろう”って。



 寄ってきた子どもたちと長縄回して遊び始めると、先ほどの偵察隊は一旦その場から姿を消す。どこに行ったんだろうと思っていたら、仲間を引き連れて来るわ来るわ10人、20人、あっという間に50~60人の子どもたち、スゴイ数。「早く縄を回して!回して」と急かす。ギュウギュウに列をつくり順番に縄を跳んでいく。はじめは両足でピョンピョンと普通の跳び方、一瞬ころんだのかと思ったらそうではなく片膝ついて跳びだした。スゴイッと関心していたら、まだまだもっとスゴイことが、ナントおしりをついて体操座りのような姿勢で跳ぶんだ、驚異的なバネ、ジャンプ力。



しばらく代わる代わる跳んでいると一人の女の子が私の傍に来て話しかけてきた。ドゥルマ語の意味はわからないが、身体全体で話すその内容は、“回すのをもっと早く、私が回す役をやるよ”とすぐ理解できた。「わかったよ、交代しよう」と日本語で答えたら、ニコッと笑って交代、笑顔で心が通じる。
 スゴイ跳び方をしているのを幼児・低学年のちびっ子たちは、じーっと眺めている。跳んでみたいけどまだ無理かな~って顔してる。そこで、もう一本の縄は回すのではなく、へびのように横波をつくる。そうすると、我先にと自信満々に波を飛び越えていく、子どもたちの歓声が村中に響き渡る。



デマテモがアクロバット的ウルトラCジャンプで跳んだ時、子どもたちの彼を見る尊敬の眼差しは忘れられない。



途中から元気印の“サクちゃん”登場。
 サクちゃんが子どもたちを捕まえようと分け入ると、クモの子を散らしたように四方八方に逃げていく。それを追いかけるサクちゃん、捕まりたくなかったらどんどん逃げればいいのに、心の半分は捕まりたいんだね、近くまで寄って来たり、また逃げたり、みーんなぴょんぴょん跳ねている。子どもはうれしいと身体で表現する。それを遠くの方で大人たちがニコニコしながら見ている。



かつて、日本もこんな光景があった。神社の境内、路地、原っぱ、そして、子ども社会の流行発信基地だった駄菓子屋。そこには大人社会にはない子ども社会が確かにあった。学校でもない家庭でもない、自分たちの居場所があり、自分たちで決めたルールがあり、異年齢集団の中で鍛えられながら心の開放が出来た。けんかしつつも「感情をコントロールする力」や「忍耐力」「協調性」といったものが養われた。
 子どもの「遊び」は大人の「遊び」とはちがい、人間的成長を考える上で学校の勉強や家庭のしつけと同じくらい、いや、それ以上と考えている。

 

このツンザ村のように「異年齢の子どもたちが群れて遊ぶ」、日本で、そんな光景の自然発生的な復活は夢のまた夢。だとしたら、かつての子ども社会を体験してきた大人が意識的に出来るところから創る必要があるだろう。



ツンザ村原っぱでの遊びは日が暮れてもずーっとつづき、二本の縄を使い“電車ごっこ”、全員2つに分かれての綱引き……。
どこからともなくお母さんたちの子どもたちを呼ぶ声、たぶん「ごはんですよ~」。その声で、みんな「じゃあ、またね」と言いながら散っていく。
私たちも「ママコンボ」から「ごはんだよ~」の声。
いっぱい遊んでお腹ぺこぺこ。



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